Innovation Story

Chemistry for a Blue Planet Innovation  Story 02

「循環フッ素社会」の
実現をめざして
廃棄されていたフッ素を回収し、「循環蛍石」として再資源化

フッ素は、私たちの暮らしや産業を支える高機能素材として、半導体、自動車、建築、航空宇宙などさまざまな分野で使用されています。その原料である天然蛍石は希少資源であり、安定調達が課題となっています。AGCでは、使用済みフッ素の再利用技術や「循環蛍石」の活用を通じて、環境保全と人類が築いてきた利便性の両立を目指す「循環フッ素社会」の実現に挑戦しています。

Story 01
暮らしや産業社会に必要不可欠な化学材料、「フッ素」

AGCの化学品カンパニーにおけるフッ素化学品事業は、独自のフッ素化学技術を核として、現代産業を支える多彩な製品群を展開しています。フッ素化合物が持つ耐熱性・耐薬品性・電気絶縁性といった卓越した特性は、幅広い産業領域で不可欠な存在となっています。

製品ラインアップは、フッ素系ガスからさまざまなフッ素系ポリマーまで多岐にわたります。半導体製造プロセスにおけるプロセス部材として、微細化が進む最先端デバイスの生産を下支えしているほか、自動車分野では燃料ホースやシール材に採用され、厳しい要求性能に応えています。さらに電車の高電圧ケーブル被覆材、航空宇宙機器の軽量・高耐久部品、建設分野では安全性と高い意匠性が必要とされる膜構造物の屋根・外装材など、安全性と信頼性が求められる用途で重要な役割を担っています。AGCのフッ素化学製品は、持続可能な社会の実現に向けた産業インフラを支えるエッセンシャルな素材として、今後も進化を続けていきます。

フッ素製品

Story 02
フッ素の原料となる「天然蛍石」は、特定の国でしか産出されない希少資源

フッ素化学製品の原材料である蛍石は、フッ化カルシウム(CaF₂)を主成分とする天然鉱物資源です。世界の天然蛍石生産量(2024年)は中国が約62%、メキシコとモンゴルが各12.6%を占め、上位3カ国だけで世界生産の87%に達しています※1。この極端な産出地の偏在が、天然蛍石を希少性の高い戦略的資源としています。この結果、日米欧では重要鉱物資源として指定されており※2安定的な調達が課題となっています。

こうした供給リスクに対し、AGCは長期的視野に立った調達戦略を展開しています。複数の調達ルートを確保することで、先端産業を支えるフッ素化学製品の安定供給という社会的責任を果たし続けています。しかし、世界中の採掘可能な天然蛍石は可採埋蔵量(320,000千トン)と生産量から類推すると30年前後で枯渇する可能性もあると考えられます。

2024年国別蛍石生産量

Story 03
「地球環境保全」と「製品の高機能性の維持」 - 二つの視点で持続可能な「循環フッ素社会」の実現へ

フッ素は、多くの産業において使用される製品の高機能化を通じて、人類の利便性の向上に大きな役割を果たしています。どうしたら地球環境を守りながら、人類が築いてきた利便性を維持することができるのでしょうか。そのためには、一度使われたフッ素を再生し、フッ素化学製品の原材料にまで戻す技術が必要です。しかし、現在はほとんどのフッ素化学製品が使用後に廃棄され、排水中のフッ素イオンなども汚泥産廃となり、フッ素を有効活用できていません。

このような状況から、天然蛍石から取り出されたフッ素をさまざまな形でリサイクルし、継続的に使用可能にすることが期待されています。私たちはこのように重要なフッ素を、グローバルなサプライチェーン全体で循環させる「循環フッ素社会」を目指し、人々の生活を支えていきます。

循環フッ素社会

循環フッ素社会

Story 04
廃棄されていたフッ素を回収し、「循環蛍石」として再資源化

この循環の一つのルートは、「循環蛍石」という考え方に基づくものです。AGCでは以前から、排水中のフッ素成分を回収して蛍石として再資源化する試みを行ってきました。従来、回収、再資源化された蛍石は、フッ素化学製品の原料として利用するには純度等の点で、さまざまな課題があり本来フッ素でなくてもよい用途に使用されたり、廃棄されていました。しかし、AGCでは、さまざまな知見を活かし、排水中から回収する蛍石の純度等を改善することで、フッ素化学製品に再利用できるレベルの「循環蛍石」を生産することに成功しています。これにより、天然蛍石由来のフッ素の循環が可能になっています。

AGCではこの技術を用いて、自社で循環蛍石を製造しており、社外からの回収と合わせ、再資源化に取り組んでいます。

循環蛍石リサイクルフロー

Topics

AGCは、フッ素樹脂「Fluon®PTFE」において、マスバランス方式による「UL2809環境ラベル検証」を取得

AGCは、Fluon®PTFEのGグレード(モールディングパウダーグレード)でUL2809に基づく検証を完了しました。UL2809とは、ISO14021の自己宣言による環境主張に基づく宣言を第三者機関が検証する仕組みです。この検証を完了したことにより AGCがマスバランス方式を用いて宣言する、製品における循環蛍石の使用割合の信頼性が第三者機関によって担保されたことになります。

AGCはフッ素原子の循環に関しての仕組みをつくることにより、循環フッ素社会の実現を目指します。

※ 製造工程で投入される原料のうち、特定の特徴を持つ原料の割合に応じて、製造される製品にもその特徴を割り当てる手法です。例えば、製造工程全般に使用される蛍石のうち20%が循環蛍石である場合、その工程で製造された製品全体の20%は、100%循環蛍石を使用して製造されたものとみなされます(下図)。一方、残りの80%の製品は0%循環蛍石とみなされます。

UL2809
マスバランス方式の考え方(一例)

Story 05
Chemistry for a Blue Planet の実践として、循環フッ素社会の実現に挑む

AGCは、循環フッ素社会を目指し、循環蛍石の活用量をますます増やしていき、フッ素のリサイクル率をあげることで、世界のフッ素枯渇を防ぎ、安全・安心・快適で環境に優しい世の中を創造することを目指します。また、循環蛍石のみならず、さまざまなリサイクル手段を組み合わせ、フッ素のサーキュラーエコノミーを構築していくことが、フッ素化学製品のリーディングサプライヤーとしての願いであり、目標であり、責任だと考えています。