• HOME
  • コラム
  • 最新設備のスタジアムに採用された高機能フッ素樹脂ETFEフィルム

コラム

屋根を通してロサンゼルスの青空を仰ぎ見る・・・
膜構造単層フィルムが採用された世界最大級の全天候型スタジアム

最新設備のスタジアムに採用された高機能フッ素樹脂ETFEフィルム

米国西海岸、同国第2の都市であるロサンゼルス郊外に2020年9月、最新設備を導入した「SoFiスタジアム」がオープンしました。NFLロサンゼルス・チャージャーズとロサンゼルス・ラムズ、2チームの本拠地となっており、国際的大規模スポーツイベントの開催などが予定されています。このSoFiスタジアムに、AGCが原料から一貫して生産している、高機能フッ素樹脂ETFEフィルム「アフレックス®(海外での商標はFluon® ETFE film)」が使われています。

施工例写真

スタジアム外観

スタジアム外観

スタジアム内観

スタジアム内観

(FabriTec Structures LLC 提供)

「SoFiスタジアム」では、単層膜構造フィルムをケーブル補強して用いた屋根としては世界最大級、面積にして約75,000m2の範囲に、AGCの高機能フッ素樹脂ETFEフィルム「アフレックス®(Fluon® ETFE film)」が採用されています。軽量で光透過性の高いこのフィルムを屋根材として使用することで、使用する構造材を削減し、安全かつ自然光をたっぷり取り込むことができる快適な全天候型スタジアムを実現することが可能となりました。

世界各国の著名なスタジアム・膜構造物で選ばれ続ける理由

AGCの高機能フッ素樹脂ETFEフィルムには、主に4つの特徴があります。透明性が高く、ほとんどの自然光を透過する「明るさ」、重量は440g/m2と軽量(250μm厚の場合)な「軽さ」、LED照明との相性がいい「光演出」、そして耐候性に優れ30年以上の使用実績がある「耐久性」です。

これら特徴により、これまでいくつものスタジアムの屋根材として導入されてきました。例えば、ドイツ・ミュンヘンに作られた「アリアンツ・アリーナ(Allianz Arena)」や、ニュージーランドの「フォーサイス・バー・スタジアム(Forsyth Barr Stadium)」などが代表例として挙げられます。

そして今回、「SoFiスタジアム」の屋根材には、アリアンツ・アリーナやフォーサイス・バー・スタジアムのようなクッション方式ではなく、シングルフィルム+スリムなワイヤー補強による単層膜構造フィルム(テンション方式)が採用されました。その理由の一つに、物件所在地である大都市ロサンゼルスの環境が挙げられます。この都市を要するカリフォルニア州は、ワイナリーや柑橘フルーツの産地としても知られているように、太陽光が降り注ぎ、澄み渡った青空に満たされ、豊かな自然に恵まれた土地です。だからこそ単層膜構造を採用することによって、スタジアム屋根の透明性を追求し、観客がカリフォルニアの青空を仰ぎ見ることができるようにしました。

一方、その高い透明性により、紫外線を含む太陽光をほとんどそのまま通すため、屋内の温度が上昇して観客の快適性が損なわれます。AGCでは、スタジアム設計者からのリクエストである光線透過性と遮熱性という、相反する特性への要求に応えるべく、独自の技術開発により完成した印刷面積65%の高反射シルバーインキ印刷加工を施しています。

実は、この点が「SoFiスタジアム」における最も難しい課題であり、苦労したところでした。この屋根の特徴である、「青空」を見て、太陽光を快適に感じてもらうためには透明性と遮熱性のバランスがとても重要になります。そこで、要求された熱光学性能を満たしつつ、この状態を長期間保持できる、印刷面積とインキについては、慎重な検討やテストが何度も行われ、最終的な印刷加工法にたどり着きました。
この印刷加工は米国でも特許を取得しており、スタジアム内に適度な明るさと快適な環境を提供することが可能となりました。なお、その高い光線透過性は、スタジアムの屋根に施工されたLED照明による光演出も、効果的にサポートすることができます。

インキ印刷加工を実施しても青空はクッキリ

インキ印刷加工を実施しても青空はクッキリ(上記動画をクリック)

「SoFiスタジアム」でのLED演出

「SoFiスタジアム」でのLED演出(FabriTec Structures LLC 提供)

また、ETFEフィルムならびに高反射インキ印刷加工は、紫外から赤外領域まで優れた耐候性を備えており、長期間の屋外曝露でも高い光線透過性や機械特性を保つことが可能です。その優れた耐久性は、今回のスタジアム屋根材に採用された大きな理由の1つとなっています。建築用途以外でも、国内の農業用施設園芸の被覆材として、AGCのETFEフィルムは30年以上の使用実績があり、驚くべきことに今なお使用され続け、その耐久性の記録は更新中です。

日本でも期待される、ETFEフィルムを使った大規模スポーツ施設の登場

日本国内でも、別コラム(日本で唯一、膜構造用フィルムとして国土交通大臣の認定を取得)でご案内したように、告示改正により建築主事の許可を得ることで屋根材として使用することが可能で、より身近な材料となりました。エンターテインメントの本場である米国で採用されたAGCのETFEフィルムを使った大規模なスポーツ施設が、日本でも実現することが期待されます。