課題解決事例
船舶の環境負荷低減のためORC発電導入を検討、しかし媒体供給に課題が・・・
カギを握るのは“GWPが1以下”の、環境対応型フッ素系冷媒だった
エンジニアリング会社P社
設備設計部

背景
廃熱活用のエンジニアリングを得意とするP社は、CO2削減を求める船舶業界から相談を受けた。その内容は、現状有効活用出来ていない「エンジン排熱」を活用し、クリーン電力を作り出してCO2削減の一助としたい、というものだった。ところがここで思いもしなかった事態に悩まされることになった。
課題
従来使っていたORC発電用低沸点媒体がもう入手できない?大至急代替物質を探すも・・・
船舶業界においては、環境負荷低減が喫緊の課題となっていました。国際海事機関(IMO)では「2050年頃までに GHG(温室効果ガス) 排出ゼロ」が共通目標として合意され、「2023 IMO GHG 削減戦略」においてはロードマップも具体化されています。これによれば、2030年までにGHG排出を2008年より20~30%削減、2040年までには70~80%削減することとされていたのです。
P社の調査では、利用可能な熱源であるエンジン排熱は80℃-100℃前後の温度域であり、低沸点媒体を使用したORC発電方式が最適であると判断していました。しかし従来型の作動媒体の代表格である、HFC245faはGWP(地球温暖化係数)が858と環境負荷が高いガスでした。またモントリオール議定書キガリ改定などのグローバルでのHFC規制強化に伴い、段階的に排出量を減らさなければいけない対象でもあり、今後入手が困難になるということが分かったのです。
この相談を受けた設備設計部のF氏は、HFC245fa代替物質を選定する難しさについてこのように語りました。
「ORC発電方式で使用される作動媒体は炭化水素系媒体とフッ素系媒体が代表とされていますが、船舶で使う以上、可燃物である炭化水素系媒体は船内に持ち込める量に制約があります。またフッ素媒体の代表格であるHFC245faはHFC規制の対象の為、今後の安定調達が困難です」
なんとか船舶で使える最適なORC作動媒体はないかと、部内のメンバーを総動員して選定を進めました。
課題のポイント
エンジンの排熱を利用したORC発電には、低沸点媒体が必要だった
フッ素系低沸点媒体の代表格であるHFC245faは環境規制強化により、今後入手が困難になるとされていた
船内に持ち込むため、媒体には、不燃性、低毒性、今後の安定調達等が条件として課せられた

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