課題解決事例

2024年問題への対応の一助として、建設作業者の負荷を軽減できる塗料とは
塗膜の強度を高めた新製品開発のカギは、自然由来の粒子状添加物

塗料メーカーI社
研究開発部

背景

建物向け塗料メーカーであるI社は、ユーザーである工務店から2024年問題についての相談を受けていた。市場内で需要が見込めると踏んだI社は、新しい機能を持った水系塗料により、この課題解決に貢献できないかと考えた。

課題

建設作業員の労働時間短縮が業界全体の課題となる中で、塗料メーカーができる貢献とは

2024年4月より、働き方改革関連法により時間外労働時間への規制が強化されることになりました。これにより、人手不足の工務店だけではこれまで通りの工期内では工事が完了できない恐れが出てきました。

工期が長引く要因の一つとして、水系塗料の耐久性が弱いことが考えられました。環境および作業者への負荷軽減のため建物に使われることが多くなった水系塗料ですが、溶剤系の塗料に比べて耐久性が劣ること、また乾燥時間が長いことが課題でした。そのため、強度を必要とする床材などへの塗装では何度も重ね塗りをしなければならず、その度に養生・乾燥のために立ち入りを禁止する期間が必要だったのです。

研究開発部のY氏は、こう振り返ります。
「工期が長引けば残業も人件費も必要になるため、無駄に時間と経費が嵩んでしまっているのが現状でした。そのため、重ね塗りしなくても強度が得られる水系塗料が求められていました」

相談を受け、一回塗りで十分な強度や厚みを出すことができる水系塗料のニーズがあるとわかったI社では、水系塗料に強度を付加するための添加物の探索を始めることにしました。

「私たちは、塗料に使える添加物の候補を片端から試してみました。しかし、添加することで色味が変わってしまったり、ただでさえ長い乾燥時間がさらに延びたりする物ばかりでした。またあるものは、特性は良さそうでしたが身体への影響が懸念されることが後で分かり放棄せざるを得ませんでした」(Y氏)

こうして、なかなか適当な物質が見つからないまま、時間だけが過ぎていきました。

課題のポイント

  • 水系塗料は溶剤系に比べて強度が低いため重ね塗りが必要になる場合があり、工期を長くする要因の一つとなっている

  • 水系塗料の強度を高めるため、いろいろな添加物を試したが、適当な物質は見つからなかった

  • 1

  • 2